12の精霊核

←PREVIOUS  NEXT→

--. intermezzo 2(信じたくない……)

 あたしは信じたくなかった。父さんが言った言葉。絶対にそんなはずない。でも、ホントにそうなっちゃのかもしれないとも思う。絶対に、間違いなく、そうなることなんてないっ! と言い切れる自信なんて欠けらもなかった。
 このまま行けば、あたしはバッシュを殺すことになる。だから、そうしないためにこの時代に来たんだと。けど、やっぱ、おかしいよ。父さん。……父さんの言ってること、矛盾だらけだよ。だって、父さんが母さんを捨てて一人でどこかに行っちゃわなかったら、こんなにややこしいことにならなかったよ。母さんを一人にして、父さんは何をしてきたの? 1509年の父さんが行方知れずになったあの日。生きてるって信じてたけど。その時から、ううん……、初めて時を越えた時から、父さんは何をしてきたの。どうして、父さんはあたしを連れて旅に出て、バッシュを一人にしちゃったの? 今、この瞬間、この時代のあたしが……あたしと父さんが母さんの傍らにいたなら、何も起きなかったのかも知れないのに。そうだ、きっと、父さんが自然の時の流れの中に身を置いていたら、シメオンが滅ぶことも、あたしたちがこの時代にくることもなかったんだ。けど、父さんにも譲れない何かがあって、こうするしかなかったのかな……。って。でも、これだけは言っておくね。母さんを捨てた報いを受けるのは誰でもない、父さんなんだよ。
 あたしはただ、デュレと一緒に「トゥエルブクリスタル」の伝説を紐解きに来ただけのはずだったのにな。けど、ホントはみんな、知っていたんだ。はげ爺もジーゼもサスケも……誰よりもきっとリボンちゃんが一番。なのに誰も教えてくれなかった。「未来は万人に開かれたもの」だから。自分の未来を知っているヒトなんか誰もいないはずだから。そんな都合のいい解釈なんて要らない。あたしはどうしたらいいんだろう……?

Gemini 20,1292 アルケミスタ郊外、シェラの教会で月明かりに照らされて……。